katabamido

口の中で考える。

クララとお日さま

太陽 雲 夕暮れ

寝床に戻る夕陽@内灘海岸

 久しぶりにフィクションを読了したので、ここに記録します。

 「クララとお日さま」は言わずと知れた2017年のノーベル文学賞受賞作品です。作者はカズオ・イシグロ先生というイギリス人の作家さんとのこと。

 私は小さなワンルームに住んでいるので、紙媒体ではなく電子書籍で購入しました。ちなみに電子書籍の初版は2021年です。

 

 さて、本題に入ります。

 「クララとお日さま」は題名通り、「クララ」というAF(人間の子供に対する友人ロボット:Autonomous Friendsの略でしょうか)が主人公の物語です。

 クララが病気がちなジョジ―という女の子の家に買い取られてから、ジョジ―が実家から巣立ってクララが廃棄されるまでをやさしい文体で描いています。

 AFは人間そっくりな姿形をしたヒューマノイドロボットで、太陽光をエネルギー源としているようです。

 

 太陽をエネルギー源とするというと、私には太陽光発電が思い浮かびますが、人間の形を損なっていないというところから推測するに全く新しい技術が使われているのかもしれません。

 「ロボットvs人類」という学童向けのSF短編集に出てきた月光浴を必要とするロボットと発想が似ているという印象を受けました。

 やはり、人の形を損なわない状態でのエネルギー確保というのは、SF 作家がリアリティを生み出すために焦点となる部分であると推測されます。

 

 また、作中でクララの感情が昂ったり、画像処理が追い付かない場合に視界がボックスで分割されるシーンがあるのですが、これはNDTスキャンマッチング*1とよく似ているなぁという感想を抱きました。おそらく空間をボクセルで分割して処理をおこなうことで、計算負荷を下げているのでしょう。

 ただし、物体認識はカメラによるもののようなので、LiDAR で取得した点群データとカメラによる映像入力の複合処理を行っているのだろうなと思います(人間にわかりやすく説明するためにそういった表現を選んでいる可能性もありますが)。

 なんて妄想する一方で、テレビのブロックノイズのようなものなのかもしれないとも思いました。

 

 各AF達がブラックボックス化しているような表現もあるあたり、もしかしたら、今普及開発が進んでいる ROS(Robot Operatinig System)等を下敷きにした技術が使われているのかもしれないなと思いつつ、作中に表現される社会が AF を受容する形に変化していくまでの過程には様々な課題があったのだろうなと想像しました。

 古典的なSFが描かれた当時よりもそういったロボットと協調する社会やロボットを構成する技術に対する私たちの解像度は上がってきているのでしょう。

 私たちの暮らす社会が技術により変容をしていくことを証左していることがうかがえて、かなりわくわくしながら読み進めました。

 ここまで書いておいてなんですが、作中のどこにも未来を表現していることを示唆する言及はありません。しかしながら私はつい、作中に未来の社会を重ねて読んでしまいました。

 人に似た姿をしたヒューマノイドロボットは古くから多くの人に夢想されてきましたが、要素技術の発展やコンピュータの高性能化を背景にそういった未来が近づいてきているという印象を受けています。

 死ぬまでに彼らとの生活が叶う未来を祈って、今回の読書記録は終わりとしたいと思います。

 

*1:探索空間内にある点群データをボクセルに分割して処理し、センサデータとマッチングを行う計算手法 出典:和歌山大学の中島先生のスライド https://web.wakayama-u.ac.jp/~nakajima/SelfDrivingSystem/assets/pdf/method_pmv_03.pdf