【エッセイ】ゴキブリを食べた。
悪食の友人に誘われて、サツマゴキブリを食べた。
彼はゴキブリが嫌いだと言っていた。生理的に嫌悪感を感じるらしい。その理不尽な嫌悪感を拭うためにゴキブリを食べたいのだとのことだった。
彼らは、公園の自動販売機近くに設置してあるごみ箱の下に密集していた。
彼らの生息地を推定する参考として、静岡県立池新田高等学校 自然科学部 の論文を参考にした。普段論文を目にする機会は少なくないが、彼らの論文はかなり素晴らしいと思う。テーマの新規性はもちろんのこと、我々の生活に近いところから、生態系の変化という大きな枠組みまでをわかりやすく整理してある。
私たちの悪食のせいで、彼らの調査に多少影響を与えてしまうことを心から申し訳なく思う。
捕まえた個体は、幼体を含めて36匹、個体数保護のために捕獲しなかった生体も含めるともう少し多かったが、いずれもサツマゴキブリで、ほかの種類は見受けられなかった。
食するのにあたって雌雄は関係ないので、雌雄の判別は行っていない。
調理方法は塩ゆで、素揚げ、唐揚げ、アメリカンドッグ風の4種類としたが、素揚げが一番おいしかった。塩ゆでは食べられたものではなく、噛んだ瞬間に猫のおしっこのようなにおいが鼻孔に広がり、苦味が舌を這うありさまだった。まったくおいしくない。
唐揚げ、アメリカンドッグ風はいずれも衣の影響が大きく、おいしいはおいしかったが、ゴキブリを食べている感は薄く、スナック菓子のようだった。
素揚げは比較的味の特徴をとらえやすかった。噛むとナッツの香りがしたほか、ほんのりと苦味を感じた。
食感も風味も焼き海苔やエビといった海産物を感じられ、前述のアンモニアっぽいにおいがが変質したような印象を受けた。
飲み込んでもしばらく食道に外骨格が張り付いている感じがしたので、頭付近の一番大きな殻は食べるときにはがしてもよいと思う。
幼体や小さめの個体は臭みが強い傾向があり、揚げてもほんのり塩ゆでと同じ香りがした。これらの個体はいずれも噛んだ瞬間口の奥で瞬間的に辛味を感じたのち、独特の臭みが口の中に広がり、後味はタイヤやラフロイグのようなゴム臭が残った。
小さな個体は捕食されるのを防ぐために、毒のようなものを体内に持っているのかもしれない。
彼らの食生活が気になる結果となった。
ちなみに友人は、ゴキブリを探すうちに嫌悪感を克服したらしい。
正直蝉のほうがおいしかったが、良い経験はできたと思うので、悪食の友人に心から感謝をこめて、この記事を締めたいと思う。
また何かおもろいもん捕まえて食べましょう。