katabamido

割りを食む。

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2023-01-01から1年間の記事一覧

彼はまだ生きている。

彼はまだ生きている。 僕は涙をこらえながらそう思った。 彼は呼吸をしていた。 それは浅く、時折止まってしまったのかと心配になるくらいの間隔が空きながら、それでも続いていた。 あばら骨の形も、頭蓋骨の形もわかるくらい、彼は痩せこけていた。 彼は煮…

【エッセイ】掛け算が苦手

横浜のみなと 私は小学二年生のころ、算数につまづいた。 掛け算ができなかったからだ。 最近その理由に気が付いたので、ここにメモしておこうと思う。 掛け算ができなかった理由は、数字を「ものを数えるための文字」として認識していたためだ。 具体的には…

【エッセイ】燃えパン

R.I.P my croissant. 朝ごはんが燃えた。 私は普段、朝食にパンとコーヒーを摂る。 最近引っ越しをした部屋には、魚焼きグリルを備えたガスコンロがついていて、よくそれでパンを温めて食べるのだが、今日は少し目を離した隙にクロワッサンに引火して、素敵…

【エッセイ】ゴキブリを食べた。

View this post on Instagram A post shared by Sakai Liunosuke (@liunosk8) 悪食の友人に誘われて、サツマゴキブリを食べた。 彼はゴキブリが嫌いだと言っていた。生理的に嫌悪感を感じるらしい。その理不尽な嫌悪感を拭うためにゴキブリを食べたいのだと…

【習作】ステラピース

ブロック敷の遊歩道を、早瀬は歩いていた。 昨晩降った雨の名残で路面は濡れていたが、あてどなく歩くスニーカーはそんなことを気にする様子もない。 地面から上がってくる水蒸気が土と草の匂いをはらんでいて、少し息苦しさを感じた。 日課というほどでもな…

水面アプリ「wasser_5(ver1.5)」

www.youtube.com Unity の練習もかねて、水面をひたすら描画するアプリケーションを作成した。 とはいえ、フリーのアセットを組み合わせただけだけれど。 手元にプロジェクタが届いたら、スクリーンセーバのように常時表示させとこうと思う。 ちなみに使用し…

【エッセイ】鬼の枷

今年度を振り返ってみて、仕事に打ち込むことが難しい一年だったなと思う。 杞憂に終わったが、転職をせざるを得ない懸念があったし、自主研究の勉強もあって、仕事とプライベートの境界が曖昧で、たまらなく疲弊していた。 いつか辞めると思いながら仕事を…

【習作】春風に乗って。

ハス@熱川バナナワニ園 まだ先に進む勇気が出なくて 「この関係に名前を付けなくていいですか。」 そうお願いしたのは僕なのに。 一人の夜に声が聴きたくなる。 そんな風に思ってしまうのが嫌だった。 そんな風に思ってしまうのが怖かった。 だから名前を付…

かわりゆく

昨年の12月に恋人だった人とお別れした。 私はその人のことが好きだった。 私は今まで、来るもの拒まずな恋愛をしてきた。 向けられた好意には、好意をもって返さなくてはいけないと思っていたから。 最初は別に好きじゃなくても、小さな好きをたくさん見つ…

【エッセイ】二流

師匠曰く。 何かを批判しているうちは二流らしい。 批判している余裕があったら、作品を作れとのこと。 伝えたいことがあって、どうしてもこっちを向いてほしいとき、はじめて作品に迫力が乗る。 特に僕の場合、文章を作品にしたいので、批判が直接的に批判…

【習作】祈りの在り方

「俺には、祈る神などいない。」 彼はつぶやくように言った。 昼休みの工事現場から吹く風は乾いていてほこりっぽかった。 単管にもたれるようにして話を聞いていた私の怪訝な顔に気が付いたのだろう。彼は続ける。 「俺が信じるのは家族と自分自身。あとは…

【習作】苔むす貴女

森のなかで。 鼻をくすぐる匂いで目が覚める。 顔をしかめるほどの臭気ではない。 小学校のバケツにかけてある雑巾のような、金魚の水槽のような、湿度をはらんだ生臭い匂いがする。 周りの地面はぬかるんでいて、周辺には腐ってしまった木々が折り重なるよ…

【習作】自我牺牲

牺牲精神 破坏对象。 自我牺牲 放纵自己。