katabamido

割りを食む。

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【習作】ステラピース

 ブロック敷の遊歩道を、早瀬は歩いていた。

 昨晩降った雨の名残で路面は濡れていたが、あてどなく歩くスニーカーはそんなことを気にする様子もない。

 地面から上がってくる水蒸気が土と草の匂いをはらんでいて、少し息苦しさを感じた。

 日課というほどでもなかったが、早瀬は時折こうして歩くことがあった。 

 追い詰められているときもあったし、いたたまれないときもあったが、その日は何となく気が向いたのだった。

 長く伸ばした前髪の奥で、彼の瞳は朝露とは違う光を見つけた。

 拾い上げる。

 それは金属でできたパズルのピースみたいなものだった。削りだした炭素鋼のように、心地よい重量感と冷たさが手に伝わる。

 薄曇りの空にかざすと、よく手入れされた錠前が開くときのような音がして、ピースは空に溶けていった。

 早瀬は不思議と、満ち足りた気分になった。

 今までだって、足りなかったわけではない。

 欠けているものを見つけるためには、まず周りから満たしていく必要があった。

 今週のお題「変わった」