katabamido

割りを食む。

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2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

【習作】夏の夜、一人。

自分を夜に溶かすようにして歩く。 夜の街を歩くのが好きだ。 メインストリートの居酒屋からは良く通る男性の声が聞こえて、水路からは濡れたアスファルトのような香りがする。 歩く。 歩く。 50Hzに照らされて、黒の511がコマ送りのように見える。 「実は輪…

【エッセイ】もういい、休め。

十年来の友人達と久しぶりに電話をした。 一人は寮の同室で一年間をともに過ごし、もう一人は二つ隣の部屋に暮らしていた。 学校を卒業してからもことあるごとに連絡を取りあってはつるんでいるので、話す内容もたかが知れているが、くだらない話は楽しい。 …

【エッセイ】おみくじ「第三三番 小吉」

湘南も寒くなってきたので、ダウンジャケットを出した。 外気温は3度。もうぼちぼち年の瀬である。 ふと内ポケットを探ると、今年の1月1日に富士宮浅間大社で引いた御神籤が入っていた。 小さくたたまれたそれをぱらりとめくる。 「春くれば ふりつむ雪も…

【習作】真白の雪原

白く突き刺す風が頬を穿つ。 遠くに見える星は、目の奥に響くような光を発していて、鼻の奥がつんとする。 限りなく黒に近い濃紺の空に、灰色の稜線が横たわっている。 まるで、星と僕を隔てるかのように。 朝焼けはまだ遠い。 真白の雪原を歩く。 前へ、前…