床に寝そべってみる
フローリングが好きだ。
欲を言えば、よく磨かれた板張りの床がいい。なるべくならクリアのニスやワックスが塗られていないほうが好ましい。
ワックスが塗られていると気付く程度にはべたつくので、これじゃない感がある。
はだしで毛皮に触れた時のような、木地の質感が好きなのである。
この盛夏に話すことではないかもしれないが、冬でも家でははだしで過ごすほど板張りの床の感触が好きなのだ。
十年ほど前、地元では名の知れた道場に通っていたことがあった。練習がキツかったので、受験勉強を理由に足が遠ざかった。
道場の人間は皆、自分がその道場に所属していることを誇りに思っていた。
私はそんなに一途にはできていないので、そういった環境があまり好きになれなかったが、稽古の前後によく磨かれた道場の床の肌触りやにおいは今でも深く印象に残っている。
もしかしたら私にとって、きれいに磨かれた床は丁寧な暮らしの象徴なのかもしれない。
おなじような理由で、寺院や神社の床も好きだし、濡れ縁がある家に暮らすことができれば申し分ないと思う。
我が家もそんな床にしたくて、今でも気が向いたら雑巾がけをしている。クイックルワイパーではどうしても物足りないのだ。
夏は特に、きれいに掃除した床に寝そべるのが最高の贅沢だと思っている。
風呂上りの火照った素肌を床に押し付けるようにして、冷たい床を味わえれば最高である。
上裸のまま床に寝そべっていると、空気に接しているところよりも床に触れているところのほうがよく冷えることに気が付く。
床に接しているところから冷たくなっていくので、姿勢のゆがみを意識するきっかけにもなる。
さて、この記事を執筆するにあたり調べてみたところ、空気の熱伝導率は0.0241(W/mK)であるのに対し、木材の熱伝導率は0.12(W/mK)らしい。
木材は空気の約五倍ほど熱をよく伝える性質があるということだ。
つまり、体感は数値としてもおおむね正しいといえる。
気が付くと二時間ほど意識を失っていて、急いで服を着て布団に潜り込むこともざらにある。
体が冷えているので、汗でべたつく布団を蹴り飛ばしたりせずに済むし、布団を被らずに意識を失う癖がついていると、どこでも仮眠が取れるので大変便利である。
個人的には冷やしたビールよりも、スイカよりも好きな日本の夏の風物詩だ。
今週のお題「冷やし◯◯」