23歳当時の父親から将来のわが子(思春期を想定)たちへ
初めまして。
僕は、酒井龍之介です。
あなたたちがこのページを訪れるころ、僕はきっと40手前のさえないおじさんになってていることでしょう。
今交際している恋人と結婚していたとしても、恋人も僕も「親」になってしまって、もしかしたらお互いに影で小言を言い合う関係になってしまっているかもしれない。
もしかしたら、あなたたちの成長を阻害するようなくだらない固定概念を押し付けてしまっているかもしれない。
そう思ったので、急遽ここに記事を書いています。
親というものは、きっと、いつだってあなたたちの幸せを願っています。しかしそれは、今だけではない。将来的な幸せも含めての話です。
もちろん、楽しい毎日の先に楽しい未来が待っているのは間違いないけれど、それが阻害されることを防ぐ目的で、あなたたちの自由を規制することがあるかもしれません(楽しいと、楽は似ているけれど、全く別物なのです)。
「親としての務め」といえば聞こえがよいかもしれないけれど、そうじゃない。ただのエゴです。自己満足であなたたちを生んだ(私は男なので、産んでもらったが正しいけれど)私たちの自己満足のために、どうか幸せであってほしい。
もし、私たちの言動に疑問を抱いたときは、どうかこのサイトを私たちに見せてください。
過去の自分の考えを「若かった」と棚に上げてあなたたちに説教ができるほど、私たちが阿呆ではないことを切に祈りながら、この記事を締めたいと思います。
このサイトを訪れることができるようになった時点で、あなたたちは十分に大人です。
どうかあと一歩大人の余裕を見せてください。
両親のいうことなんて大概が無責任なものだし、「あなたのため」なんていうときはエゴを押し付けていることを語外に認めているようなものだけれど、とりあえずいうことを聞いておけばその場は収まるのです。
仮にいうことを聞いて失敗したとすれば、それは両親のアドバイスが悪かっただけ。責任は両親にありますから、おとなしく責任を取らせましょう。
最後に一つお願いです。
どうか、考えることはやめないでください。自分の考えを通すための戦略的撤退に過ぎないことを意識しながら、いうことを聞いてください。
考えることをやめてしまったら、人は人ではなくなってしまいます。
自分のレゾンデートルを他人に預けてはならない。たとえ預ける相手が親であったとしても。そのことだけは忘れないで。
愛しています。
23歳当時の父より
拾得物の記録(乞食Ⅱ)
走り出してから、僕はふと、このおじいさんは泥棒ではないかとかんがえた。とまれ、乗せた後に気づくようでは手遅れなのだが。
運転室内はロードノイズで(それでも、新東名はましな方だけれど。)音が聞き取り辛いし、何よりシートベルトをしているから、とっさに対応することが難しい。
やはり護身用のナイフは持ち歩いておくべきだと考えながらステアリングを握っていると、おじいさんが口を開いた。
「きっとおたくは私のことを怪しい人間だと思っているだろうけど、私はそんなに怪しい人間ではありません。ただの乞食です。」
自称乞食の時点で十分怪しいだろうと思ったが、一応頷いておく。
「そうでしょうね。」
おじいさんは続ける。
「私は、18の時に故郷の熊本を出て、茨城県庁に入庁しました。茨城県庁で公園や駅舎の設計なんかをやっていてね。もう何年も前の話だけれど。」
僕は抱えていた違和感の正体に気が付いた気がした。
上品とは言えないまでも、貧乏な人特有のギラギラした余裕のない印象を受けなかったのはそのせいだろう。
身に着けているものはそこまで高価には見えなかったから、金持ちではないだろうと踏んでいたが、元公務員といわれると腑に落ちる気がした。
そのころには僕もある程度落ち着きを取り戻して、このおじいさんがもしおかしな素振りを見せたらハンドルを左に切って、車の左フロントごと壁高欄にぶつけてしまえばよいと思っていた。
買いたての車が廃車になるのは残念だが、死ぬよりましだと。
そんな僕の考えを知ってか知らずか、おじいさんは「老いぼれの土産話だと思って聞いてほしい」と前置きして思い出話を始めた。
「君は浜田幸一議員を知っているかな、『政界の暴れん坊』と呼ばれた人物だが……いや、その若さなら知らないかもしれないね。」
「僕が入庁したての頃、それはかわいがってもらったんだ。ある時スナックでボトルを入れたとき、結構な値段でね、若い時分には痛い出費だったんだが、ハマコーさんに『君は馬鹿だね』と言われたのを今も覚えてるよ。」
「なぜだかわかるかい?」
おじいさんは投げかける。
「……わかりません。」
僕が答えると、おじいさんは正解を教えてくれた。
「なぜ2本ボトルを入れないのかってさ。『普通の人と同じことをしていても誰の印象にも残らないだろ』と教えてもらったのを今でも覚えているよ。」
なるほどと思った反面、教訓はそこだけかとも思った。
しかし今でも覚えてるあたり、乞食を拾ったのもよい経験だったかもしれない。
拾得物の記録(乞食 Ⅰ)
今日は自称乞食のおじさんを拾った。
恋人に会いにいく時,僕は何かと「拾いもの」をする。
「拾いもの」と書いたのには理由があって,「拾いもの」は単純な物体とは限らないからだ。
帰り道のこと、岡崎SAで休憩を終えて車に戻ろうとすると、見知らぬおじいさんに声をかけられた。
「すみません。少しお尋ねしたいのですが。」
歳の頃は60代後半だろうか。最近のおじいさんは若いので、実際にはもう少し歳をとっているかもしれない。
夕方で少し肌寒かったし、長めの休憩をとった後だったので、僕はすぐに走ろうと思っていたのだが、道を尋ねる程度だろうと思い直して、話を聞くことにした。
「おたく、ナンバプレートに湘南と書いてあるけれど、今からお帰りでなのではありませんか。」
僕のジムニーを指差しながらおじいさんは言う。
「ええ、そうです。」
「驚かれるとは思いますが、浜松まで乗せて行ってはくれませんか。ここまでヒッチハイクで来たんです。」
ヒッチハイクなんて言葉がおじいさんの口から出てきたことや自分がヒッチハイクを若者の特権だと思っていたこと。こんな若造を頼ろうとするおじいさんが居ることに驚いて内心苦笑した。
だいいち、COVID-19が流行している2021年、ヒッチハイクで旅をしようとする人間がいること自体に驚愕した。
平時であれば幾人かは見つかるだろうが、流行り病が怖くてろくに県を跨いだ移動もできない有様なのだ。
知らない人間を狭い車両に乗せて移動などできるわけもない。
その一方で、恋人だったらこの状況にどう対処するだろうかと考えた。
僕が車に乗せなければ、この人は夜をここで明かすのだろうか。
誰も助けないこの人を助ければ、何か大きな見返りがあるのではないか。
不要なことをして、もし病気になったら会社にどう言い訳しようとか。
そんなことを考えながら、僕は言った。
「お困りでしょうから、どうぞ乗ってください。」
運転席のドアを開けて、リュックに財布をしまいながら続ける。
「困ったときはお互い様ですし、旅は道連れといいますしね。」
おじいさんは、驚きと安堵を顔を浮かべながら、助手席に乗り込んだ。
このブログについて
こんにちは。
酒井龍之介です。
このブログは input、output を問わず、私が「口にしたもの、口にしたこと」を約1000文字で綴るブログです。
「読んでいただけるような質の高い文章を書き続けること」、「ぜひ触れていただきたいこと」を皆さんにお伝えすることをモットーに連載をしていきたいと意気込んでいます。
また、本業で技術文章を作成していることもあり、なるべく主観を排した記事をご提供したいとも考えています。
aboutページと内容は被りますが、おもな提供コンテンツは旅行記、読書記録、技術やデザイン、フィクションです。
雑多なコンテンツとなりますので、お目当ての記事に合わせてカテゴリをたどっていただけますと幸いです。
2021年12月ごろまでは g.o.a.t にて「片喰堂」として連載を行っていましたが、g.o.a.t のサービス終了に伴いはてなブログに引っ越してきました。
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